秋ともし古書の活字の美しき
と言う句を作った事がある。
蛍光灯の下で読む本も、秋の夜には、いつもとは違った趣を感じる。
それが黴臭い古書の類なら、尚更の事。
古書の活字は、趣こそ深けれど、旧字体なのでとても読みづらい。
以前、値段が安かったので、古書の全集を買ってしまって、痛い目にあった。
四苦八苦して、結局、読了しないまま本棚に押し込んであるが、
この古書の句が得られたので、無理やり自らを納得させている。
趣は欠けるが、秋の夜長に、寝床で読むには、やはり文庫本が一番手っ取り早い。
手っ取り早いのだが、
秋ともし文庫の活字美しき
これでは古書の句と比べ物にならない。
夜風にも冷やかさを感じ、夜もそろそろ沈殿し始めてきた。
虫の音も細々となり、いよいよ晩秋へと移り変わって行く。
ゆっくりと、古書の活字を眺められる時間が得られる生活は、尊い。
生活と言うのは、氷の様なものだと、感じている。
薄氷の様に脆くもあり、氷湖の様に厚くもある。
【天候】
終日、澄んだ秋晴れ。