1433声 朝の境内

2011年12月04日

早起きした訳ではないのだが、昨夜の雨から一転。
カーテンを開けると、青空が窓一杯に広がっていたので、
朝の散歩をしてみようと思い立った。

散歩。
と言っても、当然、ポケットに句帖とペンを突っ込んでいる。
玄関の戸を開けると、早朝にも関わらず、空っ風が音をたてて吹いている。
そのせいで、随分と寒く感じる。
昨夜の、あの息が白くなるような、じんわりとした底冷えの寒さ。
ではなく、烈風に当たっている耳と鼻の先から冷えてゆく、乾いた寒さである。
どちらも寒いのは嫌だが、後者の乾いた寒さの方がまだ、耐えられそうに感じる。

首をすくめながら、朝の小径をゆく。
故郷に居る時には旅人の目で、旅に居る時には故郷に居る目で、「もの」を見る。
昭和に活躍した俳人が、句作する心構えをそのような旨で説いていた。
中々簡単にはいかぬが、そう思うと確かにささやかなる発見がある。

他所の家の庭先の花。
落葉の溜まっている溝。
冬でも青々としている竹藪。
裏の神社の境内に、昨夜降り来た銀杏の落葉を、捨てに来る人。
おそらく、神社の裏に住むこの家人における、この時期の毎朝の日課なのだろう。

「ガサッ」
大きな袋から、銀杏の大木の根に落葉を返すおばさん。
そして、出て来た裏木戸からまた、家へ戻って行った。
おばさんが去ると、神社は満ちてゆく朝日と木枯らしの音ばかり。
一二句作って、神社の鳥居を出ようとすると、ジョギング中の若い女性とすれ違った。
女性はそのまま境内を進んで、社殿の前でぴたりと止まり、
賽銭箱に賽銭を投げてお祈りしていた。
お祈りが終わってから、どちらの方に去ったのかまでは、見ていない。
鳥居の方には、戻ってこなかったようであった。

【天候】
終日、冬晴れ。
朝から風甚だ強し。