早起きした訳ではないのだが、昨夜の雨から一転。
カーテンを開けると、青空が窓一杯に広がっていたので、
朝の散歩をしてみようと思い立った。
散歩。
と言っても、当然、ポケットに句帖とペンを突っ込んでいる。
玄関の戸を開けると、早朝にも関わらず、空っ風が音をたてて吹いている。
そのせいで、随分と寒く感じる。
昨夜の、あの息が白くなるような、じんわりとした底冷えの寒さ。
ではなく、烈風に当たっている耳と鼻の先から冷えてゆく、乾いた寒さである。
どちらも寒いのは嫌だが、後者の乾いた寒さの方がまだ、耐えられそうに感じる。
首をすくめながら、朝の小径をゆく。
故郷に居る時には旅人の目で、旅に居る時には故郷に居る目で、「もの」を見る。
昭和に活躍した俳人が、句作する心構えをそのような旨で説いていた。
中々簡単にはいかぬが、そう思うと確かにささやかなる発見がある。
他所の家の庭先の花。
落葉の溜まっている溝。
冬でも青々としている竹藪。
裏の神社の境内に、昨夜降り来た銀杏の落葉を、捨てに来る人。
おそらく、神社の裏に住むこの家人における、この時期の毎朝の日課なのだろう。
「ガサッ」
大きな袋から、銀杏の大木の根に落葉を返すおばさん。
そして、出て来た裏木戸からまた、家へ戻って行った。
おばさんが去ると、神社は満ちてゆく朝日と木枯らしの音ばかり。
一二句作って、神社の鳥居を出ようとすると、ジョギング中の若い女性とすれ違った。
女性はそのまま境内を進んで、社殿の前でぴたりと止まり、
賽銭箱に賽銭を投げてお祈りしていた。
お祈りが終わってから、どちらの方に去ったのかまでは、見ていない。
鳥居の方には、戻ってこなかったようであった。
【天候】
終日、冬晴れ。
朝から風甚だ強し。