1464声 正月の影

2012年01月04日

待てど暮らせど、来ない。
バスが、である。
まさか、正月4日から休業と言うこともあるまい。
そう思って、寒風吹きすさぶバス停で、首をすくめつつ坂道の彼方を眺めていた。

呼吸気管を病んでいるかのように、「ゼーハー」言いながら、坂道を上がって来て、
妙なブザー音と共にバスがドアを開けた時には、予定時刻を15分も超過していた。
そのまま乗車し、えらく焦っている荒い運転に揺られつつ、北上して行く。

終着のバス停がある駅までは、旧街道をひたすらに上る。
赤錆の浮き出たバス停。
大きな商家の崩れかけた土蔵。
暖簾を下ろして久しい商店の数々。
西日に照らされる車窓風景は、正月と言えど陰鬱な影があった。

途中のバス停で、手押し車を押した御婆ちゃんが乗って来た。
3つバス停を越すと、御婆ちゃんは4つ目のバス停で、
寂しそうな場所へ降りて行った。
上州弁で言うなら、足を引きずりながらの乗り降りは、「おおごと」そうだった。
胸の奥が、微かに、いや軽い動機を伴って、ふるえた。

【天候】
終日、快晴。