1541声 形跡

2012年03月22日

もうすぐ三十路になると言うのに、
このおぼろげな生活はどうしたものかと、悩んでいる。
悩んでいるが、気にはしていない。

先日も、いつものことながら遅刻気味に自宅を飛び出して、
慌ててバスに乗って一息ついた。
先程、乗車口で取った区間券をポケットに入れようとした時に、
「あっ」と、気が付いた。
着ていたジャケットの腹部に、何やら白い石膏のような物が付着している。
付着の具合から見ると、どうやら上から垂れた形跡がある。
爪で一部を削って、凝視し、感触を確かめ、匂いを嗅いでみた。
この、そこはかとなく爽やかな匂いが鍵となって、鑑識の結果が出た。
この物体の正体は、「歯磨き粉」なのである。

揺れる車窓を眺めつつ、おぼろげな記憶を遡ると、
思い当たる節が無いでもない。
数日前、泥酔しつつ朝方帰宅した。
その際に、おそらくこのジャケットを着たまま歯磨きをし、
口からだらだらと泡を垂らしていたのだろう。
多分そうだ、と納得する頃には、バスは終点へと着いて、
その歯磨き粉の服のまま、句会へ参加してしまった。

【天候】
晴れて暖かな一日。