1623声 紫陽花の月日

2012年06月12日

群馬県平野部では、紫陽花が綺麗に咲き始めた。
紫陽花にまつわる話で思い浮かぶのは、シーボルトである。
シーボルトは紫陽花の学名を、「Hydrangea otaksa」と名づけ、帰国後に紹介した。
この「otaksa(オタクサ)」は、シーボルトが妻とした日本女性「楠本滝」の、
「お滝さん」の呼び名であると言われている。

シーボルトは1823年。
ドイツ人ではなくオランダ人と偽ってさ鎖国下の日本へやって来た。
長崎にあった出島のオランダ商館の専属医師になり、出島の外に蘭学を教える鳴滝塾を開いた。
塾生のひとりであり、塾頭を務めていたのが、後に蘭学者になった高野長英である。
後に蛮社の獄で捕らえられ、江戸伝馬町の牢屋敷に収監されるも、脱獄し諸国を転々と逃亡した。
幕府に追われる身となった長英を、一時的にかくまった場所のひとつとしていま尚残されているのが、
中之条町六合赤岩地区の養蚕農家「湯本家住宅」である。
その部屋は現在、「長英の間」と呼ばれている。

なんだか、歴史コラムのようになってしまった。
紫陽花のあの色合いには、彼方の月日を思わせる効果があるようである。
逃亡中の長英も、道中で紫陽花を眺めつつ、師であるシーボルトのことを思っていたのであろうか。
そして、明日も雨になるだろうか。

【天候】
朝より曇り、夕方から雨。