1691声 虫の闇

2012年08月20日

お盆を過ぎて、残暑が厳しい。
日中は猛暑で、外へ出るのが危険状態だが、
夕方の風は驚くほど澄んでいる。
そう感じるのは、薄紫色の山陵や涼しい色に揺らぐ夜景など、
風物全体に「澄んだ」印象を受けるからである。

夜は日毎に虫の音が増えている。
俳句をやっているくせに、虫の音はおよそ、
五六種類くらいしか聞き分けられない。
聞き分けて見ようと、外へ出て真っ暗な田の畦道を歩くのだが、
虫時雨が闇と一緒に圧し掛かってくるほど、迫力がある。
よく見れば、大型の精霊バッタなども闇の中でキチキチ跳ねており、
何だか気味が悪くなって、直ぐに夜歩きは止めてしまった。

もし、生粋の都会っ子俳人をこう言う場。
つまり田舎の畦道などへ吟行に誘ったなら、おそらく俳句どころではないだろう。
押し寄せる蚊の大群。
波のように広がる虫時雨。
地面を跳ね跳ぶバッタやコオロギの類。
頬の当たりに蛾の大きな奴が「ピト」っとくっついた日にゃ、
卒倒してしまうのではなかろうか。
かく言う私も、首をすくめながら畦道を引き返して来たので、
偉そうに言えたものではないが。

【天候】
終日、快晴。