3530声 夏が来れば②

2016年07月08日

梁、をご存じだろうか。「はり」ではなくて、ここでは「やな」と読む。

 

渋川市の利根川の岸に「落合梁(おちあいやな)」という店があり、ここではこれからの季節、鮎や鯉の料理が食べられる。川を見下ろす開放的な店内には川のせせらぎが聞こえ涼を演出し、焼き場では炭の周りに円を描くように並べられた串刺しの鮎が、パチパチと美味しそうな音をさせている。

 

僕の親父は渋川の魚屋に長年勤めていた。渋川や高崎、築地から届く魚を店でさばき、伊香保や四万へ運ぶ仕事だった。夏休みで家にいると、3時くらいに配達途中の親父が家によっては茶を飲み庭に水やりをしていた記憶がある。魚を運ぶ白いバンは魚くさくて、乗るのが嫌だった。

 

親父は庭で炭を熾して自分で鮎を焼いてしまう人だったが、渋川に住む親父の母親が生きていたころなどは毎年のように落合梁へ家族を連れていった。僕は小学校低学年だろうか、魚よりは肉が好きだったけど、焼きたての鮎はおいしくて、川原に降りては川に敷かれたすだれに鮎が跳ねる様子を見た記憶がある。

 

去年、母や姉家族と十数年ぶりに落合梁へ行った。時期が良かったせいもあると思うが、以前のように賑わっていた。ふと、鮎の焼き方教わっておくべきだったな、と思った。それどころか僕は、鯵のおろし方ひとつ教わらなかった。親子とは、そういうのもなのだとも思うが。