県道25号線。
地元の人間誰もが、この道を通称「高渋線」と呼ぶ。
雨降りの早朝、私はその高渋線を、バスに乗って北上して行く。
つまりバスは、高崎市から渋川市方面へと、向かっている。
バスの中には、私と老婆と車掌のみ。
渋川市に入る手前の寂れたバス停で、停車。
腰の曲がった70がらみの、その老婆が、億劫そうにバスを降りる。
バスカードを持っているので、おそらく常連だろう。
老婆の被っている帽子に、黄ばんで浮き上がっていた汗染み。
その下にある、深く年輪の刻まれた小さな顔が、瞼の裏に残っている。
荒々しくドアが閉まって、バスが動き出す。
折り畳み傘をさす老婆が、車窓から一瞬にして消える。
前を向くと、バックミラーに運転手の鋭い目。
なんだか、そんな心細い状況で、渋川駅に向かった私。
到着して、土砂降りの中、今回の俳句ing参加者と合流。
過去最低の動員人数である事を、改めて確認。
こじんまりと、楽しもうと、気分を変えて、一路、伊香保温泉行きのバスへ乗車。
伊香保温泉へ着いて、ひとしきり観光。
万緑に包まれた雨の温泉場も、中々、風流である。
旅館街、石段街、伊香保神社、源泉、河鹿橋、石段の湯、徳富蘆花記念文学館、食堂、土産屋。
等々、雨にめげずに、句を詠み進めつつ足も進める。
その後はバスで下り、更に下り、高崎市街へ。
高崎タワー美術館で開催中の「土門拳の昭和」展を見学し、ヤマダ電機へ。
2階売り場にあったテレビは、なんと、迫力ある3Dテレビ。
時計を見ると、黄昏時刻。
じゃあ、ってんで、ふらふらと赤提灯の暖簾をくぐる。
もはや参加者の筆も止まり、焼き鳥屋のカウンター越しに見る、大相撲の結果に集中。
そんな訳で、今回の俳句発表は、明日掲載。 (抜井)