6032声 時間を遅らせる

2024年12月12日

動物にとって食べることは一大事である。寒くとも川の中で虫や魚が流れてくるのをじっと待つ白鷺を見るたびに思う。食べることが一大事ならば「飲み込む」ことも一大事である。ようやくありついた獲物が万が一にも有毒だったら元も子もない。食べることに付随する「飲み込む」とは、「飛び降りる」と似ている。食べ物というのは基本的に噛み続けていればなくなるようにできている。それでも飲み込みたいのは意思的でありたいということか、あるいはどうしようもなく気短かか。どうしてお酒を温めるのか?それは温かいことが細胞レベルの親和性を高めるからだとふと思った。喉は皮膚から遠い。その上意思的である。「食べる」ことを「飲み込む」ことではなく、「染み入る」ことに近づけたいのだと思う。おいしいということの中には「否応なく染み込んでゆく」という要素、感覚があるはずである。それが大事だと思えたら飲み込むことを遅らせることができる。