『第一回立ち食いうどん選手権』に、一通、道場破り的投稿が寄せられました。
それは、立ち食いうどん選手権に、階級の違うクラス。
つまり、立ち食い「そば」での、殴り込み。
これによって、異種格闘技選手権の様相を呈する、今回の選手権。
その読みごたえは、有名週刊誌の連載コラムに匹敵する、と思います。
よって、下記、原文のまま掲載。
立ち食いで「天ぷらうどん」vs「かけうどんと卵」
というのはやはり群馬人の考えることであろうか?
一部の越後生まれ埼玉人はそうは考えない。
やはり立ち食いと言ったら「そば」である。
それも「天ぷらそば」と「かけそばと卵」などという中途半端なものではなく
その全てが合体した究極の立ち食いそば、立ち食いそばの王道『天玉そば』である。
揚げ油をたっぷりと含有したまさにアブラギッシュなそのボディに
葱、ゴボウ、タマネギなどの野菜類、そして薄紅色の小エビ等が透けて見える
ボリウム感たっぷりな掻き揚げ。
対するはコレステロールをたっぷり含有し盛り上がる卵黄を擁する生卵。
そしてどす黒く何処までも節系の濃厚で熱々の関東風汁。
これらがそば丼のなかでまさに三位一体となってコラボする様は食欲を猛烈にそそる。
これに葱取り放題、七味かけ放題でカウンタに用意されていればまさに言うこと無し。
さあカウンタに差し出された究極の立ち食い蕎麦を頂こうではないか。
先ずは卵。
これと汁が混ざって汁が白濁しては元も子もない。
生卵が本来持っている卵黄のネットリとした甘味、
卵白と濃厚な汁が醸し出すタンパク質の青臭いような甘味と醤油味。
ここは汁に浮いた卵を一気に口に啜り込み、
舌と上顎で卵黄をつぶし口いっぱいに広がる卵黄と卵白と醤油のハーモニーを楽しもう。
生卵の口中ハーモニーに楽しみながら次ぎの味覚への準備だ。
掻き揚げの下になっている蕎麦をゆっくりと持ち上げ掻き揚げを巻き込むように
蕎麦を掻き揚げの上に持ってくる。
蕎麦の下敷きになった掻き揚げは次第に汁に沈む。
汁に沈みながら掻き揚げはボディに含有していた揚げ油を汁の中に放出していきながら
自身は汁を吸ってタプタプのボディに変わっていく。
ここで注意しなければならないのは掻き揚げは決して汁に負けてはならないと言うことだ。
一部の立ち食い蕎麦店舗の掻き揚げは掻き揚げと言うより
「天かすの集合体」
と言えるようなものがある。
(じつはこのタイプの掻き揚げが大好きだという某落語家がTVに出ていて講釈していたのを記憶している。)
この天かすの集合体は汁に浸ると見る間に粉々に砕けたように
汁じゅうに広がり持っている揚げ油で汁を油地獄と化してしまう。
これはやはり拙い、いや不味い。
油で適度にまろやかになった濃厚醤油汁とシッカリとした蕎麦の風味を
汁が熱いうちにズルズルと掻き込みその喉ごしを味わおう。
この時汁はまだまだ熱さが残っていなければならない。
蕎麦をあらかた食い終わった丼をもう一度確認する。
蕎麦は無いものの汁を吸った掻き揚げが丼のなかで存在感を高めている。
残った汁は濁っていてはならない。
つまり蕎麦もまたシッカリとしたボディの持ち主で喫食の間に伸びたり溶けたりしてはならないのだ。
さあ最後に汁をたっぷり吸った掻き揚げを食そう。
汁に負けないボディ。
蕎麦が無くなるまで丼の中で汁の侵食に耐えるだけのボディを持った掻き揚げは
シッカリとした歯ごたえでしかもジューシーである。シャブシャブ、ムシャムシャ。。。。
う~ん美味い!
最後に汁を一気に飲み干す。
コレステロールだ!血圧だ!という御仁には立ち食い蕎麦はご遠慮頂こう。
飲み終えたらふ~~~っと深く息を吐く。
そして丼を確認する。
丼の中に一滴の汁も、一片の蕎麦もかき揚げのカスも残っていてはいけない。
全ての食材が腹に入ったことを神仏に感謝しつつそっと手を合わせ丼を返却する。
そして洗い場にいるオバサンに声を掛ける
「ごちそう様!」、きびすを返してその場を足早に去り、
次の客に席を譲るのが立ち食いの礼儀というものだ。
抜井:「天玉」と言う選択に、玄人の感。
L字カウンターの一堂が「むむむ」となる表情が目に浮かびます。
そして、まず、卵を吸ってしまう。
と言う、今回の投稿では初となる食べ方。
最後に、つゆを吸ったかき揚げを食べる、と言うのも、興味深いスタイル。
・越後生まれの埼玉人さんのケース
・「天玉そば」の場合
1.七味と葱をふんだんに入れる。
2.汁に浮いている卵を、一気に吸ってしまう。
3.そばをかき揚げの上に乗せ、かき揚げをつゆの中に沈める。
4.そばをあらかた食べ終える。
5.最後に、つゆをたっぷり吸ったかき揚げを食べ、
つゆを全部飲み干してから、神仏に感謝する。