1816声 三角帽

2012年12月25日

昨夜、駅から自宅までタクシーに乗った。
時に、クリスマスイヴである。
運転手は年の頃、七十年配のおじいさん。

「どこかにお出掛けでしたか」
「いま、東京から帰って来ました」
「東京は賑やかでしょう」
「都内はどこも、クリスマスのイルミネーションが綺麗でしたよ」
「じゃあ、前橋はちょっと寂しいでしょう」
「前橋はちょっと寂しいですね」
「街に三角の帽子をかぶった人がいませんものねぇ」
「そう言えば、三角の帽子をかぶった人がいませんねぇ」

太宰治の小説「ヴィヨンの妻」に、主人公の大谷がクリスマスの日に、
三角帽やら仮面やらをかぶって、馴染みのバーでドンチャン騒ぎをしている描写がある。
流れる街の灯に、そんな三角帽を思い浮かべていた。

【天候】
終日、冬日和。