231声 その少年のリュックサックはなぜパンパンだったのか 前編

2008年08月18日

「ここ空いてますか」
強烈な目力と共に、質問を私に投げる一家のお母さん。
「ええ」
やや圧倒されつつも、回答。
私のその言葉聞く前に、一番下の男の子を席へと座らせていた。

一家は四人。
お母さんにお姉ちゃん二人、そして、私の隣に座った末の子。
列車が新町駅に着きドアが開くや否や、ドカドカっと鉄砲水の如き威勢で、
車内に入ってきた。
やや狂気的に目を血走らせ、子供等の手を引いて空いてる席目掛け一直線。
ドアも閉まり切らぬ間に、ボックス席に一人座っていた私の前には、お姉ちゃん二人。
隣には末の子、そして通路脇に仁王立ちする母。

やがてドアが閉まり、緩やかに電車が振動して行くと突然。
「ほら、お父さんに手ー振りなさい」
子供等に指揮官から命令が下ると一斉に、私の直ぐ横の車窓に向って一家全員で手を振る。
私も横目でチラリとやってみると、改札の向こうにはメガネをかけた優し気な父の姿。
かかあ天下の座布団にはピッタリなタイプの、などと思っていると突然。
「こーすけ、アンタのリュックなんでそんなにパンパンなのよ」
って、もう初めちまったお母さん。
「ちょっとアンタ、空けて見せなさい」
末の子、こーすけにリュックの中身を改めさせる御奉行さま。
「わわわ、わぁったよぉ」
おっとりと、どもりながらリュックを空ける、小学校低学年と思しきこーすけ。
我関せず、早くも任天堂DSと携帯メールに夢中の姉二人。

明日へ続く