256声 薄まってゆく

2008年09月12日

それはまだ消費税が3%だった時代。
幼少の時分、父と出かけた東京。
夏の暑さを凌ぐ為、上野駅の地下レストラン街で初めて入る喫茶店。
私はコーラを注文。
その時にした、父への質問を今でも覚えている。

「とーさん、なんでココはさぁ、コーラが300円もして、外の自動販売機では110円なん」
「そりゃ、ショバダイ。場所の代金だな。」
「だから、お姉さんがコーラ持って来てくれて、
こんなにクーラーが効いた部屋で、ゆっくり飲めるんだよ」

私は曖昧な返事を打って、氷をストローで突付いた。
納得したかしなかったかは忘れてしまった。
何だか妙な気持ちが、小さな塊の様にして心に残った事だけは覚えている。
成長するにつれ、その小さな塊は氷の様に溶けていったのだろう。
肝心なモノを薄めながら。