277声 可能性を生む現実

2008年10月03日

作家であり僧侶である、瀬戸内寂聴さんが、ケータイ小説を発表していた。
と言う、新聞記事を先日目にした。
紫式部にちなんだ、「ぱーぷる」と言うペンネームで、
ケータイ小説サイト「野いちご」に、今年5月から掲載されていたとの事。

「稚拙な文章表現」や「安直な展開」、「既存恋愛小説などからの盗用が多く見られる」等々。
文学としての脆弱性について、昨今、批判的な意見が目立っていたケータイ小説。

しかしながら、寂聴さんの「行動力」には恐れ入った。
「まず、自分で書いてみる」
と言う姿勢。
真贋を見極めるのはそれから。

そしてこの、「明日の虹」というタイトルの寂聴さんのケータイ小説。
「源氏物語」の翻訳者である筆者は、その内容に源氏物語の要素を織り込み、
若者向けの恋愛小説に仕上げた。

このケータイ小説を読んで、紫式部に興味を持ったり、
11世紀の文化に興味を持つ人だって、必ず居るはずだろう。
新しい可能性は、一方向の現実から生まれるとは限らない。
美術館で見た、芸術的な絵画に感動するのも、一つの現実。
WEBサイトで見た、CGの画に感動するのも、また一つの現実。

年齢の話ってのは、少し野暮だが、寂聴さん、86歳である。
しかし、若者を凌駕するそのアヴァンギャルドな感覚には、改めて舌を巻く。

どの現実が真で、どの現実が贋か。
考えてたら、眠くなってきた。
ってのが、私の現実。