305声 まどろみ訪問販売員 後編

2008年10月31日

休日、目が覚めからも床にいる遅朝。
昼食を腹一杯食べた、穏やかな午後。
宴も終わり、独り部屋で過ごす夜半。

こんな状況下は奴さん、実に上手く、人の部屋に上がり込んでくる。
これがまた、こちらも実に良い心持なので、ついつい手を休めて、
奴さんが上がり込むのを、あまり咎めもしないのだ。
奴さんが上がり込んだが最後。
コクリコクリ、眠りの押し売り、眠りの勧誘。

最近じゃ、奴さんの事を、「睡魔」なんて乱暴な呼び方をするようだけれど、
あれでいて、実はそんな悪い人ではないのだ。
「睡魔に襲われる」
なんて、大袈裟に形容する人があるけれども、奴さんも随分と気に病んでいた様子だった。
人の不意を衝いてやって来る奴さんも悪いが、やはり来てくれないと、
こちらも気が休まらないのは確かである。
人によっては、毎晩、こっ酷く追い返している人もある様だが、
奴さんも体を心配しての事である。
大目に見て、手を打ってあげるべき時があるはずである。

さて、奴さんもいよいよ準備に取り掛かって、瞼を下ろそうと必死である。
では、オヤスミナサイ。