車通勤の私は、朝、通勤ラッシュがある時間には家を出る。
信号待ちの長い車列の中、車窓から毎朝見る光景がある。
それは、車道の脇を登校する小学生たちである。
ランドセルを背負った四、五人の小学生たちが、列を成して登校して行く。
この地区で登校の際に決められている、登校班と言う制度だ。
「班長」と言う黄色い腕章をランドセルに付け、一番前を歩いているのが、上級生。
黄色の帽子を被って、心許な気について行くチビッ子が一年生であろう。
そんな光景を見ていて、気付く事が二つ。
まず、大人しい。
皆一様に黙々と、中には浮かない表情で、億劫そうに歩いて行く子供も見受けられる。
年寄りのハイキングじゃあるまいし。
「子供は風の子」なんて表現を使うと、年寄りだと言われそうだが、
私が子供時分には耳蛸な言葉であった。
実際、毎朝、笑顔と大声を撒き散らしながら、風と戯れる様にして、登校していた様な記憶がある。
その中には絶対にいつも、どこで拾って来たのか、
棒っ切れなんか持って、振り回してる奴がいたものだ。
そして、小綺麗。
皆、身に付けている衣服が小綺麗、お洒落である。
男子も女子も、小生意気に凝った刺繍が施されている、
どこぞのキッズブランドやら、と見受けられる服装が多い。
私の時分には、特に男子は皆、体操着で登校してくる子が多かった。
その子らの体操着の肘や膝には、大抵、擦り切れを隠す為の、
継ぎはぎやアップリケが見えていた。
私も経験があるが、親が膝などの目立つ場所に、幼稚で派手なアップリケをしてしまい、
非常に恥ずかしい思いをした事がある。
大人しくて小綺麗な子供たちが、黙々と登校して行く光景。
そんな光景を、毎朝、車窓から眺めていると、すこし寂しい心持になる。
私の胸中を駆け回る言葉は、
「もっと笑顔と大声で元気よく」
「服なんか擦り切れるまで遊べ」
そして、年寄りだと思われても、やはり言いたい。
「子供は風の子」
さぁ、鼻たれ小僧、棒っ切れ持って突っ走れ!