317声 風の子

2008年11月12日

車通勤の私は、朝、通勤ラッシュがある時間には家を出る。
信号待ちの長い車列の中、車窓から毎朝見る光景がある。
それは、車道の脇を登校する小学生たちである。

ランドセルを背負った四、五人の小学生たちが、列を成して登校して行く。
この地区で登校の際に決められている、登校班と言う制度だ。
「班長」と言う黄色い腕章をランドセルに付け、一番前を歩いているのが、上級生。
黄色の帽子を被って、心許な気について行くチビッ子が一年生であろう。
そんな光景を見ていて、気付く事が二つ。

まず、大人しい。
皆一様に黙々と、中には浮かない表情で、億劫そうに歩いて行く子供も見受けられる。
年寄りのハイキングじゃあるまいし。
「子供は風の子」なんて表現を使うと、年寄りだと言われそうだが、
私が子供時分には耳蛸な言葉であった。
実際、毎朝、笑顔と大声を撒き散らしながら、風と戯れる様にして、登校していた様な記憶がある。
その中には絶対にいつも、どこで拾って来たのか、
棒っ切れなんか持って、振り回してる奴がいたものだ。

そして、小綺麗。
皆、身に付けている衣服が小綺麗、お洒落である。
男子も女子も、小生意気に凝った刺繍が施されている、
どこぞのキッズブランドやら、と見受けられる服装が多い。
私の時分には、特に男子は皆、体操着で登校してくる子が多かった。
その子らの体操着の肘や膝には、大抵、擦り切れを隠す為の、
継ぎはぎやアップリケが見えていた。
私も経験があるが、親が膝などの目立つ場所に、幼稚で派手なアップリケをしてしまい、
非常に恥ずかしい思いをした事がある。

大人しくて小綺麗な子供たちが、黙々と登校して行く光景。
そんな光景を、毎朝、車窓から眺めていると、すこし寂しい心持になる。
私の胸中を駆け回る言葉は、
「もっと笑顔と大声で元気よく」
「服なんか擦り切れるまで遊べ」
そして、年寄りだと思われても、やはり言いたい。
「子供は風の子」
さぁ、鼻たれ小僧、棒っ切れ持って突っ走れ!