よし、今日こそは、自部屋の大掃除。
と、一念発起して、朝から雑巾片手に取り掛かる。
まず目に付いたのは、ギターである。
ろくに手入れもしないから、弦は錆びてるし、ネックは手垢だらけだし、
おまけに全体が埃まみれである。
それじゃあって、一年の敬意を表して、掃除に取り掛かる。
弦を新品に張り替え、ネックを丹念に掃除し、全体を磨き上げる。
見違えるほど綺麗になったギターを、惚れ惚れと眺めていると、
銀色に輝く六本の弦が、「俺を弾け」と、言っている。
様な気がして、しばし、錆びついた腕で新鮮な音を体感。
「はっ」
と、気付いたら正午。
結局、午前中はギターに手を取られて何も片付かなかった。
しかしまぁ、まだ午後がある。
午後に取り掛かったのは、まず、本の整理。
今回の自部屋大掃除における、最大の難局である。
手強い箇所から、片付ける作戦を実行。
床の上に平積みされて、埃まみれになっている本類。
それを雑巾で拭いて、本棚に移す。
どんどん移す。
一度入れたら、奥の本がもう取り出せない。
と思いつつも、どんどん移す。
あれ、この本、さっき文庫本で同じのがあったな。
と思いつつも、どんどん移す。
ところで、本棚に入っている、夥しい数の空ビール瓶は最終的に、どうしよう。
と思いつつも、どんどん移す。
「疲れた」
と、まだ読んでない本でも読みつつ、少し休憩。
これが、いけなかった。
胡坐を書いて読んでたのが、いつの間にか、寝ころんで読む。
そして、終りまで一気に読破。
「よし、やるか」
って、本を閉じたら、射し込む西日に染まった、橙色の部屋。
おまけに、やけに肌寒くなってきた。
遠くで聞こえる烏の声。
一目散に失せて行く、ヤル気。
積まれた本の上に、まだ大分、綺麗な雑巾。