今シーズンの、榛名湖氷上開きが中止になった。
気候や、氷の強度不足等の影響だから仕方ないが、
近隣のワカサギ釣りフリークは意気消沈だろう。
中止になってからの方が、マスメディアへの露出が多い。
ってのも、皮肉な話だが、今時期の榛名湖と言えば、
思い出す悲惨な話がひとつ。
随分と前の榛名山。
買ったばかりの四輪駆動はグイグイと、冬の林道を榛名湖目指して登って行った。
ご機嫌で鼻歌交じりに、初めてのマイカーを運転する友人。
後部座席に積んである、バーベキューの食材とビールが気になる私。
青空の下、広大なスケートリンクの様に結氷した湖面。
溶け残った雪が眩しい、榛名湖畔に車を駐車し、
早速、バーベキュー道具を下ろす。
「俺、食材のクーラーボックス持って行くから」
「じゃあ、俺は食器と、錬炭と、あれ、網は」
「えっ、網」
「そう、焼く、網」
「あぁ、積んでねぇや」
一番肝心な、焼き網を忘れてしまったのである。
全身の力が一気に蒸発。
私はすっかり意気消沈してしまって、
缶ビールを次々に開けて、比喩表現に勤しんだ。
「焼き網の無いバーべキューなんて、ボールの無い球技だ」
「焼き網を忘れてバーベキューに来たお前は、まわしを忘れて土俵に上がった力士だ」
無言で立ち上がり、何やら後ろの枯れた熊笹生い茂る林で、ガサゴソやってる友人。
抱えて持って帰って来たのは、30cm四方程の漬物石の様な、丸石。
「榛名湖殺人事件」
ってな言葉が、瞬時に私の脳裏をかすめた。
「焼けるぞ」
「えっ」
「この石で、肉、焼けるぞ」
「えっ、あー石焼って、あるもんな」
「そう、石焼、石焼だ」
湖畔に転がっていた、怪しげな丸石で、果たして無事肉は食えたのか。
また、明日。