402声 緑青石のBBQ 前編

2009年02月05日

今シーズンの、榛名湖氷上開きが中止になった。
気候や、氷の強度不足等の影響だから仕方ないが、
近隣のワカサギ釣りフリークは意気消沈だろう。
中止になってからの方が、マスメディアへの露出が多い。
ってのも、皮肉な話だが、今時期の榛名湖と言えば、
思い出す悲惨な話がひとつ。

随分と前の榛名山。
買ったばかりの四輪駆動はグイグイと、冬の林道を榛名湖目指して登って行った。
ご機嫌で鼻歌交じりに、初めてのマイカーを運転する友人。
後部座席に積んである、バーベキューの食材とビールが気になる私。

青空の下、広大なスケートリンクの様に結氷した湖面。
溶け残った雪が眩しい、榛名湖畔に車を駐車し、
早速、バーベキュー道具を下ろす。

「俺、食材のクーラーボックス持って行くから」
「じゃあ、俺は食器と、錬炭と、あれ、網は」
「えっ、網」
「そう、焼く、網」
「あぁ、積んでねぇや」

一番肝心な、焼き網を忘れてしまったのである。
全身の力が一気に蒸発。
私はすっかり意気消沈してしまって、
缶ビールを次々に開けて、比喩表現に勤しんだ。

「焼き網の無いバーべキューなんて、ボールの無い球技だ」
「焼き網を忘れてバーベキューに来たお前は、まわしを忘れて土俵に上がった力士だ」

無言で立ち上がり、何やら後ろの枯れた熊笹生い茂る林で、ガサゴソやってる友人。
抱えて持って帰って来たのは、30cm四方程の漬物石の様な、丸石。
「榛名湖殺人事件」
ってな言葉が、瞬時に私の脳裏をかすめた。

「焼けるぞ」
「えっ」
「この石で、肉、焼けるぞ」
「えっ、あー石焼って、あるもんな」
「そう、石焼、石焼だ」

湖畔に転がっていた、怪しげな丸石で、果たして無事肉は食えたのか。
また、明日。