422声 どどめ色

2009年02月25日

土着の人と話していて、たま話題に挙がるのが、「どどめ」である。
このどどめってのは、桑の実の事で、埼玉や群馬県の一部で使われている方言。

「そう言えば最近、どどめって見ないよなぁ」
だとか、
「現代っ子は、どどめと言う物を知っているのだろうか」
など、どどめの絶滅を危惧する声が多い。
確かに、近年、桑畑自体の減少が著しいので無理もない。
しかし、絹遺産群に代表される県内の養蚕文化を、味で体感していたのだと、
幼き頃を懐旧する。

学校の帰り道、通学路に広がるのは、広大な桑畑。
白と黒のまだら模様のカミキリ虫が、旨そうに桑の葉を穴だらけにしていた。
畑一面の緑が照り返す季節が過ぎる頃には、良く、
桑の木になっているどどめを食べながら帰ったものだ。
果汁で汚れた手を、体操服のTシャツで拭いてしまうから、
私の白いTシャツは、いつも所々どどめ色に染まっていた。
友達とふざけ合って、どどめの実を投げ合いながら帰った時は、
流石に母親から大目玉を食らった。
染み付いたどどめ色は手強く、なかなか落ちないのである。

しかし、今時分は、Tシャツをどどめ色に染めている子等も、
殆どと言って良いほど見ない。
いや、見れないのだ。
あの頃を思い出すと、まだ若い、未成熟などどめを食べた時の、
あの酸っぱくてほろ苦い味が、甦ってくるようである。