祖母から鰻を貰った。
鰻と言っても、スーパーで売っている、鰻の蒲焼きである。
一匹、1380円。
安価な外国産鰻ばかり食べている我家においては、
年に一度、御目に掛れるか否かと言う、立派な鰻なのだ。
先日、電話で祖母から小用を頼まれた。
蚊取り線香だとか、懐中電灯に入れる単2電池など。
祖母祖父、二人暮らしだが、何かと入り様な、
細かい物を買い忘れる事もしばしば。
最近、めっきり悪くなった祖母の足が、買い物を億劫にさせる様なのだ。
そこで、鰻を餌に、と言ったら失礼だが、上等な鰻を御駄賃として、
孫の私に買い物を頼んだと言う訳である。
注文の品を一式買って、宅を訪ねた。
祖母は大いに喜んで、早速、鰻を持たせてくれた。
自宅に戻り、その晩の夕食で、鰻丼にして食べた。
山椒を振りかけている時、忍び寄っていた感傷が、溢れて来た。
昔よりも、腰が曲って、一回り小さくなった祖母の背中が甦った。
本当は、この立派な鰻は、祖母に食べて欲しかったのだ。
ふっくらと香ばしく、美味しい鰻だった。