風呂上がり。
冷蔵庫から引っ張り出すのは、賞味期限の切れた冷奴。
水気が付いたまま小鉢に盛ったものだから、かけた醤油が薄まってゆく。
買う時に貼ってあった見栄を剥がして、恵比寿麦酒をグラスに注ぐ。
麦酒対泡が、7:3の比率になる様に、丹念に注ぎ入れる。
傾いたグラスから、麦酒は一気に喉に滑り落ちて、
泡痕だけが帯状にグラスに残る。
風味が乏しく、味気無い冷奴。
硝子窓に映る、味気無い表情。
味気無い。
と言えば、生活の足が自動車である事も、その要因の一つである。
つまりは、生活の中で、歩く時間が極端に減っているのだ。
私は勤人であるから、職場までの通勤は車、仕事の移動は車。
生活の中で、車に乗っている時間が非常に長い。
この車で移動している時間に、生活の旨味。
例えば、電車の中で、偶さかに友人に出くわしたとか、
毎朝の通勤時に、必ず商店街の人に挨拶するとか。
生活の味をふくよかにする、旨味成分が失われているのではなかろうか。
などと、感じる。
そして、生活が味気無いものになって行く気がする。
安物の冷奴みたいに、味気無いのっぺら坊の生活。
とは言え、満員電車で通勤しないで済むだけマシか。
と言う結論を当てがって、最後の冷奴の欠片を口に運ぶ。

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