510声 作戦、一時休戦

2009年05月24日

桐生の銭湯を2軒訪問。
桐生市内に在る銭湯は、7軒。
内、1軒は休業中なので、これで全て写真が揃った事になる。
予定時刻通り撮影を終えて、日が傾く前に東武鉄道で太田市へ向かう。

伊勢崎駅で乗り換える頃には、雲行きが怪しくなってきており、
太田駅南口を出てたら、鉛色の雲が空を覆っていた。
急ぎ足で、当てずっぽうに住宅街を彷徨っていると、
やはりパラパラと降りだして来た。
雨足は急速に強まり、逃げ込む様に人気の無い公園に転がり込んだ。
大木杉の下、手拭いで髪の毛を拭きつつ、通り雨である事を祈りながら、
呆然と待つ。
銭湯に入った後なので、既に濡れている手拭いは、心地が悪い。

疲労と不安。
孤独と焦燥。
雨音と雨香。

「帰ろう」
白旗を振って退散しようと腹を決め、雨の中、来た路を戻る。
住宅街の薄闇を溶かす様に、ぼんやりと灯る居酒屋の看板が前方に見えた。
駆け足で暖簾を揺らし、赤提灯に吸い込まれる。
瓶麦酒を傾けつつ、店主のおやっさんに、近所の銭湯の事を尋ねてみる。
近所に在った「新島湯」は、取り壊されて、現在は跡形もないらしい。
どおりで見付からない訳である。
市内に残るもう1軒の銭湯は、駅の反対側。
もはや、訪問する気力は摩耗していた。
肴が美味く、おやっさんの人柄も良い。
他客が居なかった事もあり、銭湯の無念を晴らす為、店内の写真を撮らせて頂く。
居心地良く、小一時間程飲んでから、店を後にした。

帰り際、太田駅で偶さかに知人の方に出会い、新伊勢崎駅で途中下車。
連れ立って飲む。
またもや肴が美味く、直ぐに卓の上は瓶麦酒の列。
伊勢崎駅まで歩き、終電に転がり込む。
小豆色の席に腰を下ろし、ぼんやりと揺られる。
作戦、一時休戦。