桐生の銭湯を2軒訪問。
桐生市内に在る銭湯は、7軒。
内、1軒は休業中なので、これで全て写真が揃った事になる。
予定時刻通り撮影を終えて、日が傾く前に東武鉄道で太田市へ向かう。
伊勢崎駅で乗り換える頃には、雲行きが怪しくなってきており、
太田駅南口を出てたら、鉛色の雲が空を覆っていた。
急ぎ足で、当てずっぽうに住宅街を彷徨っていると、
やはりパラパラと降りだして来た。
雨足は急速に強まり、逃げ込む様に人気の無い公園に転がり込んだ。
大木杉の下、手拭いで髪の毛を拭きつつ、通り雨である事を祈りながら、
呆然と待つ。
銭湯に入った後なので、既に濡れている手拭いは、心地が悪い。
疲労と不安。
孤独と焦燥。
雨音と雨香。
「帰ろう」
白旗を振って退散しようと腹を決め、雨の中、来た路を戻る。
住宅街の薄闇を溶かす様に、ぼんやりと灯る居酒屋の看板が前方に見えた。
駆け足で暖簾を揺らし、赤提灯に吸い込まれる。
瓶麦酒を傾けつつ、店主のおやっさんに、近所の銭湯の事を尋ねてみる。
近所に在った「新島湯」は、取り壊されて、現在は跡形もないらしい。
どおりで見付からない訳である。
市内に残るもう1軒の銭湯は、駅の反対側。
もはや、訪問する気力は摩耗していた。
肴が美味く、おやっさんの人柄も良い。
他客が居なかった事もあり、銭湯の無念を晴らす為、店内の写真を撮らせて頂く。
居心地良く、小一時間程飲んでから、店を後にした。
帰り際、太田駅で偶さかに知人の方に出会い、新伊勢崎駅で途中下車。
連れ立って飲む。
またもや肴が美味く、直ぐに卓の上は瓶麦酒の列。
伊勢崎駅まで歩き、終電に転がり込む。
小豆色の席に腰を下ろし、ぼんやりと揺られる。
作戦、一時休戦。