ガード下商店街に在る、「島田屋」は大衆食堂です。
私は週に一、二度、訪れる、言わば常連と言える存在なのですが、
正午の島田屋の店内は、その殆どの席が、常連で埋まっています。
暖簾をくぐって店内に入り、空いている席に座る迄、徐に席の顔を見渡します。
声こそ掛けないのですが、「あの親父今日も来てるな」とか、
「カツカレーか、何か良い事でもあったな」などと、無意識に暗黙の確認を行っているのです。
その無意識の所作が、常連を常連たらしめる行為だと言えます。
さて、私があの親父の事を気に掛ける様になったのは、定かではありませんが、
一ヶ月前位だったと記憶しています。
その親父は60年輩で、私が島田屋に行く正午過ぎにはもう、右斜め奥の席で、
いつもハイボールを飲んでいました。
二つある中の、通路側の椅子に座っている姿は、酷く猫背で、
着ている服から見ても、多少うらぶれた雰囲気です。
鼠色の長袖ポロシャツ、緑色のギンガムチェック柄のワイシャツ。
この二つの着回しで、スラックスは膝の抜けた、黄土色の物しか見た事がありません。
私が気に掛った点は、その親父の注文と行動です。
まず、焼き魚とハイボールを3杯。
決まってこの注文を平らげて、出て行くのです。
当然、勘定はいつも同じ、1300円。
そして行動ですが、親父が席を立って帰る時刻と言うのが、
いつも決まって、正午半なのです。
私はいつも、店内に映っているテレビで確認しているので、時刻に狂いは有りません。
或る日、この注文と行動の規則性に気付いた私は、それからと言うもの、
どうにもこのハイボール親父の事が、気に掛るようになりました。
他の常連客、店の女将さんは、知ってか知らずか素知らぬ顔で通しています。
私も、ハイボール親父が去った後にでも、誰かに聞いてみようかとも思いました。
しかし、常連たちの間に結ばれる、暗黙の不可侵条約を破る気概は、私にはありません。
そして、つい先だって、私は湧き上がる好奇心を抑えきれず、
或る行動に打って出たのです。
明日へ続く

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