カウンターで店主と話が弾み、ついつい焼酎のボトルを入れてしまう。
余り行く機会の無い店だと分かりつつも、こんな調子でボトルが増えて行く。
グラスで飲めば良い。
懐具合から鑑みて、一等低級酒を頼めば良い。
むしろ、其処まで飲まなくとも良い。
諸々、分かってるけど、そんなのどうだって良い。
ってな具合に、カウンターでの独り酒ではしばしば、
泥酔方面スライド方式に則って、痛飲してしまう事がある。
つい昨夜がそう。
以前から気になっていた、前橋市の外れにある小さな飲み屋。
夜半に、ふらりと暖簾をくぐって3時間。
つまりは、居心地が良かったのである。
その手の小さな飲み屋は、2次会、3次会帰りの馴染み客が多く、
既に赤ら顔の出来上がった状態で来る。
しかしながら、梯子酒の最後に、馴染みの店の冷と鮭茶漬けなんかで締めるってのは、
中々、粋人の飲み方だと、密かに憧れている。
ふらりと、暖簾をくぐって来たのは、足元も覚束ない近所の建築屋社長。
その、上機嫌な喋り方と店内に響く声量は、先程まで居たスナックでの余韻を残している。
「冷で良いですか」
ってのは、女将さん。
「あーそうね、赤城山かなんかで、あと、鮭茶漬けね」
このひょうきん者の社長、なかなか通な注文である。
「いやぁ、女将さんの顔見ないとね、なんだか寝付きが悪くて、ははは」
私はカウンターの端で、飲み切れもしない焼酎のボトルを見つめつつ、
粋で艶っぽい冗談に、酔って、笑った。

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