551声 財布の軽みと胃袋の重み 後編

2009年07月04日

昨日の続き

愛想の良い、快活なおばちゃんに食券番号を呼ばれ、取りに行く。
厨房から出てきたカレーは、洗面器大の皿に御飯をよそう、と言うより、
盛り固める、と著した方が適切な様相。
その上には、これでもかと、ルーが溢れて垂れ落ちんばかりにかけてあり、
もう、何だかやけくその意気込みを感じる。
途端に、先程までの食欲、気概は雲散霧消し、夕方の入道雲の如く、不安が湧いてくる。
兎も角、逃げる様にお盆を持って、カウンター席へ移動する。

「全部食えるのかい」
と書いた短冊が、擦れ違う人たちの目尻にぶら下がっている。
自問自答、それはこっちのセリフである。
節目がちにその場を通り過ぎ、カウンターテーブルの一等隅に座り、
完全に舞い上がりつつ、カレーライスの山を急いで崩して行く。
味わう余裕も無いと言う、お粗末。
もうこうなりゃ、こっちもやけくそである。
一心不乱にスプーンを往復させ、その佇まいたるや、
ゼンマイ仕掛けの人形と見紛うばかり。

最後の一口を口へ運び、かろうじて食べ切ったのだが、気力体力、共に摩耗して虚脱。
おまけに、私一人が水を被ったかの如く汗だく。
カウンターテーブルを見渡せば、先程、嘲笑の薄笑みを浮かべつつ、
私に一瞥をくれた、サラリーマン諸氏が、一人も居ない。
どうやら、戦いが長引きすぎた様である。
勝敗も見ずに去るとは、浅はか、笑止千万。
胃袋が膨らんだついでに、被害妄想も大いに膨らませつつ、食堂から辞す。
不細工に膨らんでいるであろう、自らの胃袋の重みを感じつつ、駐車場の車へ戻る。
結局、行きも帰りも足どりは重い。
結果、軽くなったのは財布だけであった。