誰か一人俳人を招いて教えを請えばすむ話だが、当然、こんな怪しげかつ酔狂な会に、
参加しようなどと言う酔狂な俳人もおらず、疑問は払拭できぬまま、回を重ねていた。
私が俳句を始めたという話が、知人づてにゆるやかに伝わって行き、ついに私は、
俳人の集う「句会」なるところにもぐりこむ機会を得たのである。
始めて参加した句会は、主催の俳人宅で有志数名が夜な夜な集まって開いているものであった。
晩秋の夜、案内役の知人を乗せ、私は子持山の麓まで車を走らせた。
到着したのは見晴らしの良い丘の上の家で、迎えてくれた家主が、今の私の俳句の師となろうとは、
このときはまだ露とも思わなかった。
その時分の私は、俳句に真剣に取り組もうなどと言う志も無く、ただ「輸入」のことのみ頭にあったので、
ともかく「句会」の手順を習得すべく目を光らせていた。
家主は炬燵に入って一升瓶からどんどん日本酒を注いでいる。
傍らで、参加者は一言も発せず、黙々と句を案じている。
張り詰める場の空気に気圧されつつも、私はどうにかこうにか、頭の中ででっちあげて体裁だけ整えた、
つまらぬ句をそろえて出した覚えがある。
そして、もちろん佳句など作れなかったが、俳句の生まれる現場を体感できた充実感は覚えている。
その夜、真剣に参加していた人には、お茶に濁しの私などが紛れ込んでいて迷惑をかけたが、
その数年後、自身がこの家に足繁く通うことになろうとは、これまた露ほどにも、であった。
第4回へ続く

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