3500声 いざと云うとき

2016年06月08日

朝こそ小雨だったが、日中の東京の空は梅雨の晴れ間が広がっていた。
体調もいまだ不安定だが、それは私だけでなくて、
今朝の通勤列車内のことである。
いつもどおり、満員の人の中、私の隣でつり革に掴まっていた男性が、
ゆるやかに傾斜してゆき、どすっと後ろの人にぶつかりつつ、倒れた。
意識はあって、私を含めた周辺の人たちで抱きかかえ、着席してもらった。

 

顔面蒼白、しかも坊主頭のため、玉のような冷汗が流れている。
苦しそうな表情を浮かべつつ、二つ先の駅でふらふらと降りて行った。
梅雨時で不快指数の殊更高い車内なので、気持ちはよく分かる。
年に一度は見る光景であり、周りの人もそうなのか、
座っていた人は席をゆずり、実に手馴れた調子ですみやかに介抱が進んだ。
私も三年間で二度、貧血を起こして席を譲られた経験があるので、
他人事ではない。

 

東京の人は冷たいというが、満員列車では皆が眉間に皺を寄せているが、
たしかに優先席を頑なに譲ろうとせぬ若者もいるにはいるが。
いざと云うときは、思いやりがある。