3502声 路地の煙

2016年06月10日

雲は多くも、朝から青空が見えた。
見えるのは良いが夏日になり、べったりと暑さがまとわりついてきた。
昨夜の麦酒の水分が体から抜け切らぬのか、倦怠感が濃い。
おまけに、先延ばしにしていることばかりなので、
どうも胸中の陰雲は晴れぬ気がする。

 

帰りがけ、駅の裏路地に差し掛かると、宵闇の中、
なんだか香ばしい匂いが立ち込めていた。
その発生源は、路上に置いてあるプランターの植木裏から漂う煙らしい。
すれ違いざまに目を向けると、屈みこんだ老女が一人、七輪で目刺を焼いていた。
七輪はダブルで、もう一網は輪切りの烏賊など魚介系である。
これからの来客と、焼き物をつまみに、一杯やろうというのか。

 

ビルが立ち並ぶ、都内の駅裏に取り残されたようにある、小さな民家の前であった。
有楽町のガード下なども、やたらと七輪の煙を路地にたなびかせている。
夜になると、照明の中、ビルの谷間に流れる白煙がありありと見える。
路上に裏返したビールケースに座り、老若男女、ジョッキを上げている。
なんだか、落語的光景である。