3787声 64

2017年03月21日

訳あって、吾妻線に乗って横山秀夫著「64」を読んでいた。横山秀夫さんは僕が関わる「伊参スタジオ映画祭」でシナリオ審査員を務めていただいたこともあり、昨年の映画祭では映画化された『64』を上映、主演の佐藤浩市さんとともにゲスト来場していただき、その日は映画祭にとって忘れがたい一日になった。

 

お読みになった方はわかると思うが、記者担当の刑事・三上が警察内部の利権争いや昭和64年に起きた誘拐殺人「64(ロクヨン)事件」の真っただ中で奮闘するこの小説。面白いのだ。この日は最寄りの中之条駅ではなく隣の市城駅に車を止めていたのだが、高崎からの下り、本から目を上げたら中之条駅だった。乗り過ごした!

 

焦らずに駅員に訳を言い、待合室で上りの電車を待ちながら再び「64」を読む。40分ほどして上りの電車に乗る。小説では、三上が警察内での圧力に屈さずに「匿名にしていた交通事故加害者は大会社の娘。被害者の中年男性は長年の工場勤めで貧しく、週1回の飲み屋での晩酌が唯一の楽しみだったが事故後間もなく死亡した」と記者にまくしたてるシーンだった。思わず活字が滲む。はっと顏を上げれば・・市城を乗り過ごしていた。

 

結局、2度目の折り返しを待つ渋川駅で「64」を完読した。すごいな、横山秀夫さん。