3791声 芳ヶ平

2017年03月25日

西洋かんじきと言われるスノーシュー。靴に取り付けると、新雪の上でもある程度までしか沈まない。これを履くのはまだ2度目だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

田代原の道に車を停車させ、中之条町六合山岳会の方たちに交じって、雪原の芳ヶ平を横断する。率いるのは御年79歳の山本茂さんということもあり、まあ長~~~い間山での暮らしをしてきて「囲炉裏の前でのんびりしている茂先生は、山に入ると変わるぞ」と話しには聞いていたのだが、その行程をなめていた。皆さんとてつもなくタフだった。そしてその元気さにようやく引っ張り上げられる僕は、貧弱だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

片道6キロ。標高差はどれくらいだろうか。林の間を、山あいを歩く。雪がない時は笹に覆われていて歩けないという、おにぎり山が最後の難関だった。雪に覆われるとそのような場所でもスノーシューや専用スキーで登っていける。足跡のない先頭を行くことをラッセルと呼ぶらしいが、その時はずっとスクワットをしている気分だった。ただ、振り返ると一面は雪に覆われた雑木林で、白と黒とのコントラストが心に染みる。遠く山々の稜線の間には草津温泉街も見えた。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

おにぎり山の山頂を過ぎて、宿泊場所となる山小屋が適度な大きさに見えた。これがもっと遠くならがっかりしたし、近すぎても感動が薄かったかもしれない。太ももパンパンの僕にはその山小屋が、幸せの黄色いハンカチに見えた。