3649声 倉渕パン

2017年11月08日

穏やかに流れる烏川。その川辺は田んぼになっていて、今時期半分以上ははんでえの米も収穫されたようだ。まだ部分的にのこった米が、曇り空の下少し寂しそうに干されている。

 

この倉渕のお米、はんでえ米はとても美味しくて、以前南相馬から吾妻に避難してきたHさん一家がここの米を気に入り、福島へ帰ったあとも2年ほど米を俵で買いにきた。僕は農家さんとの橋渡しをしていて、その俵をうんせこらせと車に乗せたことを記憶している。

 

その米農家さんの家からすぐそばに、倉渕パン工房「湧然(ゆうぜん)」はある。ここの吉森さんは以前からの知り合いで、この度倉渕の米を使った酵母を用い米をパン生地にも練りこんだ食パンを、店の看板パンとして売っていくというので、そのパッケージデザインの依頼を受けた。

 

吉森さんは生まれは奈良で、自然の中でパンを焼くことが夢だったそうで、今はそれを実現させ烏川向かいの倉渕の道の駅にて天然酵母パンを販売している。これが噛めば噛むほどに滋味深く、素朴でいておいしい。

 

パン工房の隣には大きめの机があり、落としたコーヒーもご馳走になった。壁の黒板には数学・国語などの文字。「娘が友達を連れて店にくるので、勉強を教えているんですよ」と吉森さん。手広く広げた販売を、今はあえて狭めて、家族や自分のための時間を確保しているのだそうだ。

 

窓際では、大きな瓶に入った米酵母がぶくぶくと泡を立てている。こういうペースの生活、いいな。