3664声 一日十年

2017年11月23日

SNSで一方的にフォローしている映画評論家の方が「世の中には埋もれた映画がたくさんある。『100歳の子供と12通の手紙』は観た方がいいぜ。俺はその年に「キネマ旬報」のベストテンに押したのだけど、『100歳の〜』を推したのは俺一人だった」という書き込みを読んだ。

 

さっそく検索するとその映画、amazonプライムで観られるじゃないか。便利な時代だ。僕は会ったこともないその映画評論家の方を根拠もなく信頼していて、何気なく見てみた。とてもいい映画だった。

 

持病により残り数日の寿命と判断された少年と、口の悪い宅配ピザ屋の中年女性の物語。女性は少年に提案する。「あなたが1日生きると、10才歳をとるの」と。幼い少年は翌日二十歳となり(そう思い込み)、病院内の少女に告白する。お涙ちょうだいのべたな展開ではなく、厳しい現実にいかに“活きたファンタジー”で向き合うか、という物語だった。

 

思えば、僕が好きな『八日目』しかり、『トト・ザ・ヒーロー』しかり、『オアシス』しかり。ダウン症、最愛の家族の死、脳性まひ。厳しい現実にふと、ファンタジーが入り込む。それが映画だからといえばそれまでだし、魔法が起きて何かが解決するわけでもないが、厳しい現実を悲観的に、真面目に、正しく受け止めるだけが生き方ではない。

 

気づけばもう11月も後半。1日を1日未満にしか感じられない僕に、1日を10年と思うことはできない。それでも『100歳の子供と12通の手紙』は忘れられない映画になった。いい映画を観たい。もっと。