第17回伊参スタジオ映画祭初日が終わった。
見知った顔、尊敬する顔が、こちらから出向かなくてもこんな山の上まで来てくれるというのはとても嬉しいことだ。この映画祭の特徴として、リピーターは多いと思う。お客さんに限らず、関わった、関わっている若手映画監督は特に。今年の映画祭も、『月とキャベツ』を監督した篠原哲雄監督の作品以外は全て、シナリオ大賞という映画祭が行っているシナリオコンペの関連作で埋まってしまった。
その篠原監督の『花戦さ』とてもよかった。今日の映画祭上映が初見になってしまったけれど、多くの人に観て欲しい映画だった。出演者は野村萬斎、市川猿之助、佐藤浩市、佐々木蔵之介、中井貴一と豪華絢爛。佐藤浩市が演じたのは、父・三国連太郎も演じた千利休。利休と秀吉の話は有名だが、主役の野村萬斎演じるは華道家。刀の戦さではなく、花を使った秀吉との対決がクライマックスとなる。
チャンバラ時代劇であれば篠原監督ではなかったのかもしれない。「おんな城主 直虎」の脚本も務める森下佳子さんの物語と相まって、一つ一つのシーンを丁寧に重ねる篠原監督の手腕が冴える。なんにしてもクライマックスシーンが良い。
緊張があり、泣きがあり、笑いがあるのだ。まさにその言葉のままの展開なのだ。上映後のゲスト対談で聞いたところ、その笑いは原作にはなく映画で提案がされたシーンなんだそうだ。泣きて終わっても良い。けれど、その後にくる笑いのなんと魅力的なことか。
伊参スタジオ映画祭のシナリオ大賞(コンペ)の審査員は開始当初から先頭をきって関わってくださっている篠原監督。だが監督自身は脚本を書かない。
「僕は、頼まれた映画を作るだけです。職業映画監督ですから」
物語の創作から立ち上げる映画作家は良い。けれど、職業映画監督でなければできない仕事もある。明日はいよいよシナリオ大賞の発表の日。