「参加通知書」
はて、なんのこっちゃ。
と、思ったのも束の間。
記憶の糸に両手でしがみ付いて、滑り下りてくる、光景。
それは、およそ二月前の、路地裏の居酒屋での事。
その日、私の機嫌は、すこぶる良かった。
と言うのも、前橋市において、畏敬の念を抱いている、落語家の噺を聞いた後。
路地裏にある小粋な居酒屋で、瓶麦酒片手に、落語談議に花を咲かせていたのだった。
麦酒は冷たい。
肴はどれも美味い。
話題は熱を帯びて軽快に飛び交う。
そんな、我が人生至福の時間に、横から割り込んで入る、声。
「えっ、はい、書く、何を、えっ、じゃあ、はい、書いておいて下さい、はい」
話に紛れ、酔いに朦朧として、意思疎通が上手く通じなかった。
何だか、「マラソン」だとか、「参加」だとか言っていたような。
そんな事よりも今の座談、次は私が、
「人生において最初に影響を受けた落語家」を答える番なのである。
その報いを、受ける事になってしまった。
今朝、私が郵便受けから取り出した葉書は、「参加通知書」。
マラソンの、である。
そう、あの時、私の隣の人が書き込んでいたのは、私の、マラソン参加願い。
この参加通知書にはしっかりと、ゼッケンNoが記載してある。
そこはかとなくげんなりとしながら、マラソンの詳細に目を通す。
受付 7:15〜7:45(大会本部)
開会式 8:00〜8:10
着替え 〜8:30
スタート 9:00(制限時間4時間)
朝の弱い私にとっては、拷問の如き仕打ちである。
しかし、意気消沈していた胸に射し込む一筋の光、となる一文を発見。
※途中10Km地点、忠治茶屋にて、”やきまんじゅう”と”酒まんじゅう”を提供いたします。
やきまんじゅうを片手に、口元を味噌だらけにして走る、ランナーたち。
なんとも、思わず口角が上がってしまう光景ではないか。

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