「そうですか」
と、その話を聞いた瞬間、思わず大きな声が出てしまった。
急いで新聞を手に取り、丹念に記事を読んで、漸く落ち着いて感慨に浸る事ができた。
紙面は、”「寅さん」ゆかりのバス停小屋を復元”と言うもの。
それは、旧六合村、国道292号線沿にあったバス停。
過去形なのは、2006年に倒壊してしまったから。
このバス停は、寅さんフリークの間では、言わずもがな、思い出の場所。
この場所は、男はつらいよ第25作「寅次郎ハイビスカスの花」の、
ラストシーンに登場したバス停なのである。
盛夏。
濃い日差しが照りつけている、山間のバス停。
バス停でバスを待っている寅さんと、通りがかりのバスに偶然乗っている、
ヒロイン松岡リリーとの掛け合いは、フリークの間ではあまりにも有名なシーン。
その舞台が、復元され、観光スポットになったのだ。
4,5年前、伊勢崎市の寿司屋だったと思うが、寅さんそっくりの友人と、
このシーンの掛け合いをして、盛り上がった事を思い出す。
その友人が数年後、マドンナと一緒にこの場所で写真を撮影しに行った際には、
バス停が既に倒壊した後だったので、道には何も無かった。
その写真を見た時には、いささか寂しい気持ちになったので、
今回のニュースは一層、嬉く思える。
今度は、寿司屋で酔っ払った勢いでなく、この復元されたバス停で是非、
掛け合いをやってみようと思う。
いや、私がやるのでは、いまいち雰囲気が出ない。
寅さんそっくりの友人とマドンナを引っ張り出して、演じてもらう。
私は腕を組みながら、そのシーンを横で見て、ほくそ笑む。
つまりは、あのスクリーン中の映像ごと、再現してしまうのだ。
考えただけで、男はつらいよをもう一度、見返したくなってくる。

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