正午過ぎのまどろみ時間。
ほのじ店内の隅で、こそこそやっていたら、御客さん2名来店。
二人とも、70代に入ったかどうかと言う年頃の、女性。
横目でその挙措を見るに、どうやら、一見さんらしい。
比較的、空いている店内、微かに聞こえてくる2人の会話を聞いていた。
「あー美味しかったわ、また会ったらさ、きっと来ようね、奥さん」
「そうだいねぇ」
バスの時間を気に掛けながら、満足して店を後にして行った、ふたり。
その会話から推察すると、つまりはこう言う事らしい。
伊勢崎駅前からバスへ乗ろうと、停留所で待っていた2人。
2人は、他人同士。
公共交通機関に不慣れなであり、一向に来ないバスに不安を抱き、
どちらかが声をかけたのであろう。
改めてバスの時刻表と腕時計を照らし合わせると、2人が乗ろうとしている次のバスは、
来るまでに1時間ほど掛かる模様。
落胆の共有から、自ずと2人の話が弾んだ。
時刻は昼時、俄かに意気投合した2人は、「何なら昼御飯でも」と言う話の運びで、
ほのじを見つけ、暖簾をくぐったと言う訳である。
威勢の良い奥さんと、控え目な奥さんのコンビであり、威勢の良い奥さんが、
気前良くおごっていた。
人気の無い駅前のバス停。
偶然会った見知らぬ人と、昼飯を食いに、見知らぬ店の暖簾をくぐる。
そして、「また会ったら、きっと来ようね」と、誓い合って別れる。
このなんとも粋な心意気が、昭和の日の今日に、相応しい光景であった。
昭和の時代を力強く生きて来た、彼女らの様な人たちがいるから、今の時代が面白い。

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