3785声 拝啓、うつり住みまして

2018年03月25日

10年前は「町おこし」という言葉をあちこちで聞いた気がする。何をもって「町おこし」かは難しく、その結果各市町村にゆるキャラが生まれた程度なのかもしれないが、そんなふうに各町がおこしきっていない間に次の流行り言葉が出てきた。「移住」である。町はもはや観光客を招いているだけでは人口減少に歯止めがかけられず、「家賃が安くて人情に厚い地方に移住すればよりよい生活が送れますよ」と移住促進にお金と人を使いはじめた・・

 

・・棘があるね、俺の言い方棘があるね。すみません。別に「町おこし」や「移住促進」に批判的なわけではなく、むしろそれに近いことを仕事にしていたり大事だと思っているので、自戒の意味も込めて書いてみました。

 

中之条町には、中之条ビエンナーレをきっかけとして移住してきた作家たちがいる。そのうち何人かは再び中之条を離れ地元や違う場所へ移り住んでいったが、今なお残り美術活動以外で生活を立てながら暮らしている作家がいたり、「イサマムラ」と名付けられた廃校をアトリエとして貸し出す仕組みに魅力を感じ、近年移住して来た作家もいたりする。そんなみなさんとは顔見知りで、彼らの制作・生活のスタンスを、僕はとても尊敬している。

 

4/13より、中之条町へ移住してきた6人の作家が旧廣盛酒造にて「拝啓、うつり住みまして展」というグループ展を開催する。特筆すべきは、この展示に中之条ビエンナーレディレクターは関わっておらず、町の事業というわけでもないという事。つまりは純粋に移住作家たちによる発信なのだ。であるからこそ県内外からのアート関係者に来てもらい彼らを知ってもらいたい気がするが、移住し暮らしてきた彼らが関係する町の人たち、言うなれば失礼な言い方だけど普段アートには関心のない町民の方たちも足を運ぶことになると思う。それはきっと素敵な光景だ。

 

「移住」という言葉に踊らされるのは良くないが、彼らの今後には期待せずにはいられない。

 

拝啓、うつり住みまして展