4256声 キーボード

2019年07月11日

『64』や『クライマーズハイ』で知られる作家・横山秀夫さんは上毛新聞に勤めていた経歴をもつ。上毛新聞と繋がりがある伊参スタジオ映画祭では、シナリオコンペの審査員も3年務めていただいた。それが縁で未だに、年に1度は映画祭スタッフと横山さんとで飯を食うという有難い繋がりが続いている。

 

作家というのは、凄まじい職業である、という思いは、横山さんの作品を読み、話を聞いてより強くなった。作品を書く時前段階の情報集め・取材の念密さはもちろん、一度書いた長大な長編小説を編集者と共に何べんも何べんも書き直すタフさ、そして「何も書けない時」の対応もしかり。

 

横山さんの場合は、キーボードの上に両手を置いて待つのだそうだ。頭の中で物語がむすばれ、文字として落ちてくるまで。手を置いたままで1字も打たないまま1日が終わる日もあるという。僕は直接その場を見たことはないが、シュッ、シュッとえんぴつを削るように、命を削って文字を紡ぐ横山さんの姿を想像してしまう。

 

新作『ノースライト』は、警察小説のイメージが強い横山作品の中にあって、建築家を主人公に立てた意欲作。買ったその日に僕はスーパーの駐車場で読み始め、閉店になったからコンビニに場所を移し(家に帰れよ)、その日のうちに4〜5時間かけて読み終えた。深夜になっていた。それくらい、おすすめです。