4335声 7)美術館

2020年03月07日

詩や俳句と同様、アートとも距離を置いていた。二十歳までに美術館に行ったのは授業で無理やり、という感じ。生まれて初めて行ったデートは(何の告白?)川崎にある岡本太郎美術館だったが、別に岡本太郎ファンだったわけでもなく、その子とはその1回きりで別れてしまった(だから何の告白?)

 

そんな自分が、東京へ行くことがあると(コロナの今、すでに懐かしみを感じる言葉ですね)映画館ではなく美術館へ行くようになった。美術に関心を持つ理由は「下手なドキュメンタリーよりも現代美術の方がよりドキュメンタリーしているから」だ。わかりにくいか。

 

地元「中之条ビエンナーレ」を誰に頼まれたでもなく撮影したのが2007年。それから色々な縁があって、今「アーツ前橋」と「太田市美術館・図書館」で動画撮影をさせていただく機会が多い。作家へのインタビューもそうだが、アーティストが学校へ行って授業を行う様子の撮影や、展示されているものを動画的にどう解釈して撮るかなど、内容は色々。強いやりがいも感じている。

 

中之条ビエンナーレの立ち上げ人でもある入内島道隆元町長は、「アーティストたちは常に先の未来を見ている。だから彼らの目を通して未来を見ることは、この地方においてなおさら必要なことだ」というような事を語った。まさにそうだと思っていて、

 

今のアートは、きれいですね、技法がすごいですね、で片付くものは少なく、「表現の不自由」展があれだけ社会を騒がせたように、アーティストたちは今と格闘しながら作品を作っている。そして美術館という場所はその作品と「私」とが対等に向き合える場所なのだ。映画のように物語や答えを提示してくれるわけではない。その作品の中に何を見出すかは、その人しだいなのだ。それが、とても興味深い。

 

コロナの影響により、一時休館をした(結果、休館・展示終了となってしまった)太田市美術館・図書館の《太田の美術vol 3「2020年のさざえ堂—現代の螺旋と100枚の絵》の展示会場を、大嶋カメラマンと共に記録した。展示の趣旨に添い、展覧会を擬似体験できるような映像なのでぜひ見ていただきたい。そして、ステイホームを課されたアーティストたちはすでに、ウィズコロナ、アフターコロナを感じ・予感し、作品を作り始めているはずだ。暗い霧が晴れた後、それらを目撃しに、ぜひとも美術館へ足を運ぼうではないか。