4346声 18)センス・オブ・ワンダー

2020年03月18日

コロナ禍のまわりには、色々なものが渦巻いている(ちなみに、僕はずっとコロナうずだと思っていた)。世界情勢、経済自粛、保証格差・・それらは大切な問題ではあるが、コロナウィルス自体は(伝染や症状の差こそあれ)他のウィルスと変わらない細菌である。であるからして、それを吸収しても回復ができる人体のすごさも僕は讃えたい。

 

「センス・オブ・ワンダー」は公害問題を告発した「沈黙の春」著者のレイチェル・カーソンによる小さな書籍である。甥のロジャーとともに海や山に出て、そこで共有した自然界の不思議を、瑞々しい文章、簡単な言葉で残している。簡単だけど、その内容は深い。皮肉なことに、花見客がいない夜桜の下、スモッグが消えはじめてみえた空の青さに、そんなセンス・オブ・ワンダーを感じている人もいるかもしれない。

 

とあるマイナーな地方芸術祭に行った時。偉そうに言うと、玉石混合だった。ではグッとこない作品の共通点はなんだったのかと考えた時に「こういう写真かっこいいでしょ?」「私の内面はこれです」という作品、つまりは「外を意識していない」作品はつまらないように思えた。それは「見る人の立場に立って感動させるものを作りなさい」ということでもなく、僕が思うには・・

 

アートに限らず、料理人でも、表現を突き詰めてやる者は、ある日壁にぶつかる。そして気づくのだ、「世界は複雑であり、自分でどうしようとしてどうなるものではない」と。その「世界」は、自然にも置き換えられるし、人、歴史、食にも置き換えられる。そして「自分が表現しようと思うものに、世界の複雑さを共存させることができた時」に、その人の表現の幅は一気に広がる。作ることに迷っていても良い。そしてさらに「世界の複雑さ」を自分の表現の中に落とし込んだ時、その表現者ははじめて、一流になるのだと思う。

 

あなたは、僕は、世界に触れているだろうか。