4723声 文学館

2021年03月24日

萩原朔太郎はもちろん、詩とは縁遠い人生を送ってきた。が、きっかけというのはいつも突然で、昨年より「前橋文学館」の映像記録を担当することとなった。

 

文学館の展示は、朔太郎を中心とした常設以外に、つねにだいたい2つ、詩や前橋、館長であり朔太郎の孫でもある萩原朔美さん関連の展示が行われている。僕が展示を撮影したものでは、詩人であり作詞も手掛けた佐藤惣之助氏、寺山修司の天井桟敷に在籍しTBSや自主でも映像制作を行う安藤紘平氏、不思議の国のアリスの書籍イラスト等で多くのファンと長いキャリアをもつ田村セツコさん、そして朔太郎の娘であり朔美さんの母でもある小説家の萩原葉子さんがあり、その人らも今までの僕なら接点はなかったと思うが、どの方の展示もとても興味深かった。

 

文学館の展示は、美術館などと違って、いい意味での手作り感がある。それは担当職員の方が対象となる人物を掘り下げつつ、限られた予算の中で外注ではなく主に自分たちで多くの展示物を作ってしまうからだ。であるから映像も、あえて統一感を出さずに各展示ごとに、説明を聞いて僕が見た印象で撮り方・つなげ方を変えている。なかなか大変ではあるが、そうやって「1つの解釈」を提示することは面白い(そしてその解釈は独りよがりじゃくて今のところ好評・・なはず)。

 

この月末に仕上げたものでは「なぜ踊らないの-生誕100年記念 萩原葉子展」の展示が印象深かった。そこには、有名な朔太郎の娘として生まれた葛藤、小説家の歩み、そして40歳を過ぎてから盛んに行ったというダンス等のトピックのほかに、「朔美さん(息子)からの母親への思い」があふれる展示がいくつも飾られていた。それはたんなる「母思い」のいい話ではなくて、あるものはごうごうと音がするような情念のようなものが溢れ出ていた(個人的感想)。

 

それがまるっと映像で残せたとは思えないが、小指の先のつめくらいは残せたかもしれない(のちに文学館youtubeで視聴できるかと)。とかく、仕事によって知った「前橋文学館」は、今は僕のおすすめスポットとなった。今行われているマーサ・ナカムラさんの展示もとても良いよ。