雨の降る日に「Serenite」という店に行ったなら、窓際のカウンター席に座ると良い。
古小屋を改装した店内。緑色の窓枠にはきれいな細工ガラスが収まっている。テーブルは1枚板、革張りの味のある椅子が3脚並んだ、こじんまりとしたカウンター席に座り、窓の外の景色をボーっと見つめる。
酵素玄米と野菜の軽食が運ばれてくる。スープには夏野菜、ローリエのすんとした香りがするシンプルなスープだ。酸味を感じるキャベツ漬けや、程よくくたっと煮られたナスなどに箸をつけつつ、適度な硬さと粘り気がある玄米をゆっくりと咀嚼する。小さく丸いコロッケをサクッと割り口に運んだら、うまっ、と声が出てしまった。味付けは岩塩。そうやって、いくつかのおかずと玄米とスープを食べ進めていく。「黙食」という言葉は強制感を感じてしまうので苦手な言葉だが、この店においては、強制されたわけではないのにその言葉がしっくりとくる。雨宿りしている鳥だろうか、グアグアグアと鳴き声が聞こえた。
窓の外では、雨に打たれた庭木の葉が、薄緑、濃い緑、様々な色で濡れている。雨粒は葉の先につたい、きらりと光ながら地面に落ちる。店の前の地面には雨が強い時には小さな沢のように水の流れができていた。とはいえ、窓の外に大自然が広がるということではなく、その庭木の先には一般的な住宅もソーラーパネルも見える。その景色は、別世界を装うのではなく、ここも普段の生活と地続きであるということをそのまま提示していた。
提供される食べものへの愛情に加えて、それらが盛られたアンティークな小皿や椀などの大切にされている感、店全体に行き届いた「大切なものしかない」という状況下でそんな景色を見ていたら、疲れているだけかもしれないが、少し泣きそうになった。スマートフォンは置いて店に入ると決めていたので、写真は残っていない。
雨の降る日に「Serenite」という店に行ったなら、窓際のカウンター席に座ると良い。

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