4917声 本寸法

2021年09月25日

朝起きて棟梁の会社から石動駅まで歩く。「石動」と書いて「いするぎ」と読むらしい。石が揺らぐ、ということだろうか。両脇に稲刈りの終わった田んぼを見ながら川に沿って、駅まで4km。「遠いよ」と言われたが、歩くことにした。彼岸花の咲く水辺を、鴨の大家族が朝早くから散歩している。改めて、なんで棟梁に頼みたかったのか考えてみた。年月をかけて磨いた技術のみを目の前の木材に注ぐ。宮大工には一般的な大工以上に、そんなところがあるように感じる。仕事に自分を投影しないことを常々棟梁は語る。人間的にはとても自分の強い人だと思うが、だからこそのそういう宮大工という仕事が、大きな意味を持つのかもしれない。本寸法という言葉が落語で使われる。型を崩さない、という意味である。歳をとってきて、そろそろ脇見せず本寸法の人生を行かなきゃいけないと思っている。バッタが一匹、横から頭にぶつかってきた。しっかりやれよと言われた気分だ。