4658声 あっちがわとこっちがわをつくる

2021年11月05日

アーツ前橋が行なっている「アーティスト・イン・スクール」は、コロナ禍であっても多大な理解のある前橋市・宮城小学校において行われている。昨日今日とその撮影を行なった。

 

今回行なったのは、この試みで幾度となく宮城小に足を運んでいるアーティスト・中島佑太による「あっちがわとこっちがわをつくる」。6年生の子どもたちは、基本新聞紙と養生テープだけを使い、まずは教室を2つに分けるほど巨大な「壁」を作る。新聞紙はそのままでは直立しないので、丸めて柱のようなものを作る子どももいれば、天井にテープを貼り付けて上から吊ろうとする子どももいる。昨日貼っておいたものが今朝になったらはがれていて、壁が崩壊していた、という事も起こったが、形として出来上がってくる壁に興奮しながら、なかなか見栄えのする壁ができた。

 

そしてここからがこのワークショップの肝なのだが、事前の意見交換により2つに分かれている子どもたちは(その分かれ方は「ココア揚げパン派」VS「唐揚げ派」/「きのこの山派」VS「たけのこの里派」という可愛らしいものだった)壁の向こうの見えない相手に対して匿名の手紙を紙飛行機にして送る。微笑ましい内容が大半だが、なかには普段なら先生に怒られるような攻撃的な言葉で相手を攻撃する手紙もある。それはこの学校だからではなく、過去を見ても攻撃的になる人が多いそうだ。多分大人がやってもそうなる。そしてその理由は、なんとなくわかる。

 

中島佑太とは、不思議なもので会った当初は僕にしては珍しく「この人とは絶対親しくなれない」と思ったものだが、昨年の東京都美術館でのグループ展の撮影をはじめ、アーツ前橋関連以外でも会うことが多くなった。子どもたちを相手にしたアート活動を行う作家ではあるが、普段見過ごしている感情・環境についてハッとさせられることが多く、今後にも超期待をしたい作家である。

 

MOTアニュアル2020 透明な力たち 中島佑太