4660声 吉祥

2021年11月07日

今回の中之条ビエンナーレの作品で最もその作品の名を耳にして、その写真をSNSで多く見たのは西島雄志さんによる「吉祥」という作品だろう。五反田学校の一番奥の教室に展示されたそれは、細い針金状の金属を巻いて小さな渦を作り、それを溶接し面を作り、それを大量に天井から吊るし、その総体が鳳凰の形をしているという・・文字による説明が難しい作品であった。

 

文字での説明も難しいが、撮影も難しかった。一言で言えば「本物を実際目にした時の圧倒的な存在感が、映像では出せない」ことにある。西島さんの作品はこれまでにも何度か撮っているが、生き物を形取った作品はまさに生き物に対峙しているかのような気配がある(彼が作品を作る上で常に意識していることも、気配だという)。実際「吉祥」の存在感、気配は過去最大のもので、アート好きに限らず、五反田学校の奥のくらがりの中で光る鳳凰を見た人は誰しもが何かを感じたはずだ。

 

ビエンナーレとしての映像アーカイブはすでにアップされているが(下記に貼ります)、作家自身の依頼としてインタビューも含めた映像を別で作ることとなり、今夜は最後の「吉祥」の撮影だった。ビエンナーレも終わり人の気配も薄まった夜の五反田学校、1時間半くらい作品に対峙して撮影を行った。どうなんだろう、撮れたのかな、気配が。

 

西島さんは昨年、中之条ビエンナーレでの関わりをきっかけに群馬に移住してきた。お隣東吾妻町新巻で「New Roll」というギャラリーも開いている(最近やっていた3人展もすこぶる良かった)。アートを街に広めるのは行政ではなく、アーティスト自身だ。彼の作品、行動は、この先に続いている。