5077声 ピッカピカの高崎映画祭

2022年04月03日

先月末に行われた今年の高崎映画祭は、いままでと違って見えた。

 

その大きな理由としては「高崎芸術劇場」がメイン会場として使用されるようになったこと。高崎映画祭といえば高崎市文化センターの古く落ち着いたロビーを抜けて、重厚な扉を押して、受賞式の際などはこれまた昔風情のあるホールで俳優などを眺めるのが良いと思っていたが、時が変われば場所も状況も変わる。映画鑑賞のために初めて行く高崎芸術劇場を楽しみにしていた。

 

高崎駅東口からは、屋根付きの長い長い空中廊下(ペデストリアンデッキというらしい)で劇場まで歩ける。ビックカメラ方面の知った道の上をいくそのデッキを歩いていると、その辺を歩いていた思い出までも書き換えられていくような不思議な感覚だった。まだぴかぴかの劇場に入り、上映前に知人と建物内のカフェでお茶をした。

 

地元映画祭実行委員長もつとめる身として、高崎芸術劇場ホールでの上映は素晴らしかった。スクリーンは隅々まで適度に明るく、なにより音響が良かった。見た映画は後に書く『山歌』という一度別バージョンを見た映画だったのだが、以前は普通に見流してしまったあるシーンで涙が出そうになった。それは、姿は見えなくとも過去その山を歩いた人々の足音や声が聞こえてくるというシーン、つまりは音が大切なシーンだった。こういう体験は、劇場ならではだと思う。

 

上映が終了、高崎映画祭代表の志尾さんや監督らに挨拶をしたのは、ピカピカしたホールの出入り口だった。なんだかまだスタッフも映画祭もその場に馴染んでいない気がして(当たり前だが)35回を数える歴史ある映画祭が「新しい映画祭」のように見えた。それは悪いことではないと思う。規模や内容は違えど、県内で映画祭を名乗るもの同士、今後も互いに切磋琢磨していきたい。