5088声 普通の会話

2022年04月14日

何か物書きをする時は、会社や自宅でない方が捗る。スターバックスコーヒーでマックブックを開く人のことを残念な人と言う見方もあるようでそれは同意できるが、僕もまた意図的にマクドナルドであってもコメダ珈琲であってもノートPCを開いてぱちぱち始める事がある(個人経営などの雰囲気のある喫茶店ではやらない)。

 

今日は、通りがかったチェーンレストランで、ドリンクバーのジャスミン茶とオーギョーチをすすりながらこれを書いている。コロナ禍以降なのだろう、窓際のカウンターテーブルはお一人用で隣とはしきりがあり、各椅子ごとに丁寧に電源コンセントもついている。入店時は店員の案内はなく、座った人はipadのような液晶端末で注文を終える。あとはレシートをもって精算すれば、極力非接触であり、さらにこれは注文ミスなどもなく店員も楽になるオペレーションであった。きっと、こんなスタイルはある程度の規模のレストラン等では普通の風景になったのだろう。

 

となりのとなりに、オールバックの白髪にわりとパリッとしたシャツを着た品も感じるおじいさんが座った。液晶端末の存在に気づかないのだろう、店員を呼ぶ。

 

「おすすめはありますか?」
「えーと、ご飯ものにするか麺にするかで変わってきます」
「うーん。これは定食なのかい?」
「当店定食はないんですよ。セットメニューとしてご飯とスープバーを付けることはできます」
「・・・」
「・・・」
「五目焼きそばを頼む」
「かしこまりました。なんちゃら(聞き取れず)パスポートはお持ちですか?」
「は?」
「当店、60歳以上の方はそのパスポートがあると5%引きになります」
「はい」
「・・・」
「・・・」
「・・お作りになりますか?」
「・・はい。あ、量は多いのかね?」
「あ、えーと、普通盛りでしたらそれほどではないです」
「ご飯もつけようかな」
「かしこまりました。ではご飯とスープバーを付けますね」
「それにします」
「では、スープバーはあちらでお取りください」
「え?」
「お客様がスープをご自由に取りにいただけます」
「ああ、あっちね、今行くんだね」

 

そうしておじいさんは席を立った。そんな会話を横耳に聞いたとて、マニュアル接客を批判をしたいわけではなく、全国的にみてこういう場合はそういうものなんだろうなと思うだけである。

 

映画監督やシナリオライターなどは、喫茶店等で交わされる普通の人たちの普通の会話を聞く事で、今時代の会話を学ぶ、みたいなことを聞くこともある。人と人との会話は、フィクションとして書こうと思うと案外難しいものである(整理されていないことが普通なので)。そしてそもそも、普通って何だろう。そして僕もまた、悪趣味にならない程度に、こういう場所ではなんとなく、聞き耳を立てている。