5104声 <表現>

2022年04月30日

朗読劇で何度か撮影をした郡司厚太さんとその仲間によるa/r/t/s labによるインプロ公演があるというので、見に行った。インプロとは即興演劇のことで、ストーリーや役割をあらかじめ決めずに、アイデアを共有しながら俳優たちが自分たちで物語を作っていくものだ。そう聞くと僕は、笑福亭鶴瓶が毎回ゲストを呼んで即興劇をしていた「スジナシ」という番組を思い出す。

 

お客さんには観劇前に「いきたい場所は?」「印象に残っている言葉は?」といった簡単な質問を紙に書いて答える。俳優は箱に入ったその回答をランダムに引き、そこに書かれた言葉を発してそれに続く言葉を考えていく。事前に練られた芝居と違い軽い印象は否めないが、どう終わるかわからないというだけで面白かった。若い俳優たちは真面目に不真面目で、結末がすべて優しく終わることも今の若者を象徴しているようだった。

 

彼らのような若い表現者を見ると、20年前にも同じような場面を見たなと思い出す。映画学校という特殊な環境にいたので、そういう友人たちもいたはずだ。僕も、具体性には乏しかったが<表現>がしたかった。20代後半までは「そこから足を洗ったら負け」と思っていたし、30代の後半にはむしろ続けている友人の方が少なく、続ける人を見ては「まだそこにいるのか」と思ってしまったりもした。僕は今でも表現者ではない気がするし、演劇や映画や歌や俳句や都々逸やアートでなくても、農業も商業も接客業も表現だと思ったりするし、表現の場にいようがいまいが、それでいいと思っている。そして今後はむしろ、若い人たちの表現を応援するケースが増えてくるようにも思う。そういう年代である。でも、未だあきらめきれない何かもある。

 

次月はすーさん。彼こそ実は、デジタルの荒波をゆく若者たちを応援する第一線の人である。