草の戸や二本さしたる蠅たゝき 村上鬼城
わたしが子どものころは、どこの家にもハエたたきがあった。わたしが育った家にも二本くらいはあったとおもう。
今どきはどうなのかちょっとググってみると、基本的なものから、伸縮するもの、天井に対応したもの、さらには電撃タイプのものまである。
鬼城が現代に生きていたら、どんなハエたたきを使っただろうか。
草の戸の家では、ハエたたきが欠かせなかった。
武家の末裔として生まれた鬼城だったが、時代が変わり、武士の世は終わり、自ら草庵とよぶような草の戸の家に暮らす身となった。
しかし、武士の魂、二本差の心持ち、気概は失われてはいない。
ただ、草の戸の家にあるのは、刀ではなく、ハエたたきなのだが。