瓜小屋や筵屏風に二タ間あり 村上鬼城
昨日に引き続いて、瓜小屋の句だ。
数ある季語、季題のなかには、死語になりつつあるものも少なくない。瓜番もその一つだ。瓜番や瓜守が詰める番小屋が瓜小屋。瓜盗人から瓜を守るのが瓜番の役目だ。
瓜番はもはや死語となりつつあるが、群馬の果樹園が桃や梨が盗難にあったというニュースを見聞するので、桃番や梨番が歳時記に載るかもしれない。山梨県では、18,000個もの桃が盗まれたらしい。群馬では、養豚場から豚が盗まれたというニュースもあった。そうすれば豚番も必要ということとなる。でも今どきは、監視カメラをはじめとする機械警備が「番」となりそうなので、季語として採用されるのは難しいかもしれない。そもそも豚の場合、いつの季語としてよいのか分からない。
さて、冒頭の鬼城による瓜小屋の句に戻ろう。
筵(むしろ)を屏風に見立て仕切とし、瓜小屋の空間を2つに分けて使っている様子を詠んだものだ。
決して広くない見張り小屋の中を二間(ふたま)に分けて使っている。
〈月さして一ト間の家てありにけり 鬼城〉
一間の家でも、月がさせばそこに趣を感じる鬼城にとって、もっと狭いであろう瓜小屋を二間にして使っている様子は、詩心をくすぐられるに充分だっただろう。
瓜番つながりであと一句紹介したい。
〈先生が瓜盗人でおはせしか 高浜虚子〉
なんだか悲しい場面だが、虚子の俳句では結構好きな俳句だ。一番好きかも。