5183声 瓜番と瓜小屋と瓜盗人

2022年07月18日

瓜小屋や筵屏風に二タ間あり   村上鬼城

 

 

昨日に引き続いて、瓜小屋の句だ。

数ある季語、季題のなかには、死語になりつつあるものも少なくない。瓜番もその一つだ。瓜番や瓜守が詰める番小屋が瓜小屋。瓜盗人から瓜を守るのが瓜番の役目だ。

瓜番はもはや死語となりつつあるが、群馬の果樹園が桃や梨が盗難にあったというニュースを見聞するので、桃番や梨番が歳時記に載るかもしれない。山梨県では、18,000個もの桃が盗まれたらしい。群馬では、養豚場から豚が盗まれたというニュースもあった。そうすれば豚番も必要ということとなる。でも今どきは、監視カメラをはじめとする機械警備が「番」となりそうなので、季語として採用されるのは難しいかもしれない。そもそも豚の場合、いつの季語としてよいのか分からない。

 

 

さて、冒頭の鬼城による瓜小屋の句に戻ろう。

筵(むしろ)を屏風に見立て仕切とし、瓜小屋の空間を2つに分けて使っている様子を詠んだものだ。

 

 

決して広くない見張り小屋の中を二間(ふたま)に分けて使っている。

 

 

〈月さして一ト間の家てありにけり  鬼城〉

 

 

一間の家でも、月がさせばそこに趣を感じる鬼城にとって、もっと狭いであろう瓜小屋を二間にして使っている様子は、詩心をくすぐられるに充分だっただろう。

 

 

瓜番つながりであと一句紹介したい。

 

 

〈先生が瓜盗人でおはせしか  高浜虚子〉

 

 

なんだか悲しい場面だが、虚子の俳句では結構好きな俳句だ。一番好きかも。